中古車の支払総額表示のルール|含める諸費用・含めない費用と違反例

中古車の値札に「支払総額」と書くルールが始まって、すでに3年がたちました。それでも、諸費用に何を入れてよいのか、整備や保証をどう扱うのか、ローンの支払例はどう書くのかといった細かな点で迷う販売店は少なくありません。この記事では、一般社団法人 自動車公正取引協議会(公取協)が公表している改正規約の説明とQ&Aをもとに、支払総額表示の決まりを販売店の実務に沿って整理します。

中古車の支払総額表示とは:2023年10月1日施行の規約改正

支払総額表示は、自動車公正競争規約と同施行規則の改正によって始まった、中古車の販売価格の表し方の決まりです。公取協のQ&Aによると、改正規約は2023年3月27日に認定され、6か月の準備期間を経て2023年10月1日から施行されました。対象は店頭のプライスボードだけでなく、広告や注文書などを含むすべての販売価格です。

改正の背景として、公取協のパンフレットは、広告に安い車両価格を出して集客し、商談の段階で高額な保証や整備の購入を求めたり、「納車準備費用」のような不適切な諸費用を請求したりする販売の問題を挙げています。同じパンフレットには、2021年3月に10代から70代の男女1,174人を対象に行ったアンケートで、消費者の9割が支払総額の表示を支持したと記されています。

支払総額の定義

中古車の「支払総額」とは、「車両価格」に、その中古車を買うときに最低限必要な「諸費用」を足した価格です。公取協の説明では、販売店を管轄する運輸支局で登録し、店頭で納車する場合の価格と位置づけられています。2023年10月1日からは、販売価格を表示するときに「支払総額」の名称を使い、内訳として車両価格と諸費用の額を示し、保険料や税金、登録等に伴う費用が含まれている旨と、登録の時期や地域など一定の条件をつけた価格である旨を表示することになりました。車両価格は、店頭で引き渡す場合の消費税込みの現金価格で、展示時点で付いているナビやオーディオなどの装備を含みます。諸費用を含まない金額を支払総額として出すのは認められていません。

支払総額に含める諸費用の内訳

支払総額に入れる諸費用は、保険料、税金(法定費用を含む)、登録等に伴う費用の3つに分かれます。公取協の資料に挙がっている項目を表にしました。

区分含める費用補足
保険料自賠責保険料未経過相当額を含む。月割で算出
税金自動車重量税、自動車税種別割自動車税種別割は未経過相当額を含む
法定費用車庫証明や検査登録の証紙・印紙代購入時に必ずかかる手数料
リサイクルリサイクル預託金相当額車両価格か諸費用のどちらに入れてもよいが、支払総額には必ず含める
登録等に伴う費用検査登録手続代行費用、車庫証明手続代行費用購入者が行うべき手続きを、依頼にもとづき販売店が代行する費用(書類作成費用は除く)

車庫証明が要らない地域や、代行しない店の扱い

迷いやすいのが車庫証明手続代行費用です。公取協のQ&Aでは、車庫証明が不要な地域の販売店でも、他地域のお客様が買う可能性があるため、諸費用に含めて表示するとしています。金額は、管轄の運輸支局で登録する前提で、近隣で車庫証明が必要な地域を管轄する警察署の費用をもとに出します。車庫証明の代行をしていない店も、代行する前提の支払総額を表示します。商談で不要と分かったお客様には、その分を差し引いた額を示せば足ります。

このほか、ナンバーのない車の標板(ナンバープレート)代は登録時に最低限必要な費用として請求してかまいません。商用車は営業用・自家用のどちらで表示してもよいものの、どちらの場合の価格かを必ず書きます。法律上お客様が負担する自賠責保険料などがあるため、「諸費用0円」という表示は認められていません。手続代行費用を販売店が負担するのはかまいません。名義変更そのものに必要な書類は車の名義変更に必要な書類で整理しています。

登録等手続代行費用を諸費用に入れる理由

中古車の支払総額には、検査登録手続代行費用と車庫証明手続代行費用を必ず含めます。公取協のQ&Aは、その理由を「お客様が正しく価格を比べられるよう、支払総額の中身を同じ水準にするため」と説明しています。登録や車庫証明の手続きは販売店が代行するのが一般的で、登録時には必ず生じる費用だからです。反対に、この2つの代行費用を車両価格の側に入れるのも認められず、必ず諸費用として表示します。諸費用の額を書くことも必須で、お客様が金額と内容の妥当さを確かめられるようにするためとされています。車庫証明を代行しない店でも、代行を前提とした支払総額を出す点は見落としやすい決まりです。

支払総額に含めない費用と車両価格に入れる費用

支払総額に関わる費用は、「諸費用として入れるもの」のほかに、「お客様によって要否が違うので入れないもの」と「諸費用として請求できず、車両価格に含めるもの」があります。後者の2つを取り違えると、表示どおりの価格で買えない状態になりやすいので、分けて覚えておくと安全です。

扱い主な費用公取協の考え方
支払総額に含めない任意保険料、希望ナンバー申請費用、県外登録の追加費用、納車配送費用、下取車諸手続代行費用お客様によって要否が違うため、最低限必要な費用に当たらない
車両価格に含める納車準備費用、通常仕上費用、車内清掃、洗車、クリーニング販売店が商品化のために当然行う作業の費用
車両価格に含める納車点検費用、納車整備費用などの軽整備名称に関係なく商品化の費用として扱う
車両価格に含めるオークション会場からの陸送費、注文販売の陸送費中古車の仕入れに要する費用
車両価格に含める利益、販売手数料、広告掲載料、土日祝納車費用利益相当の費用で、別途の請求は不当な価格表示に当たる

定期点検整備と保証の扱い

定期点検整備や保証をつけて売る場合、その費用は車両価格に含めたうえで、「定期点検整備付き」「保証付き」と表示します。整備費用を支払総額に入れずに見積書で別に計上するやり方は認められていません。定期点検整備の実施が保証の条件になっている場合も、その整備費用は保証のための費用として車両価格に含めます。

整備をしないで売る場合は「定期点検整備なし」と表示します。要整備箇所があるなら、コンディション・ノートなどで箇所を明らかにします。そのうえで、お客様の希望で整備を行い、事前に見積もりを示して了解を得たなら別に請求できます。ただし「整備費用を払わなければ売らない」という条件をつけると、不当な価格表示として重大な違反になります。メンテナンスパックやETCのセットアップのような追加の商品も、購入を条件にはできず、つけない場合の支払総額を明瞭に表示し、含めた額は参考として併記する形になります。

納車準備費用を諸費用に入れてはいけない理由

中古車の「納車準備費用」や「通常仕上費用」は、名称にかかわらず諸費用として請求できず、車両価格に含めて表示する費用です。公取協は、納車前の車内清掃、洗車、クリーニング、ワックスがけなどを、販売店が中古車を売るにあたって当然行うべき作業と位置づけています。「納車点検費用」「納車整備費用」といった軽整備の費用も同じ扱いで、オークション会場から店までの陸送費も仕入れの費用として車両価格に入ります。これらを車両価格から外して別に請求すると、表示された価格で買えない「不当な価格表示」に当たり、2023年10月1日の改正で初回から厳重警告の対象になりました。見積書の諸費用欄に独自の名目を足す前に、それが最低限必要な費用かどうかを確かめることが大切です。

支払総額表示の書き方と注記の例

支払総額の表示には、金額のほかに書き添える文言があります。公取協のチェックポイント資料の記載例を参考に、表示の決まりを並べます。

  • 名称は「支払総額」を使う。「コミコミ価格」などの言い方は併記まで
  • 内訳として「車両価格」(または「車両本体価格」)と「諸費用」の額を書く
  • 支払総額に保険料、税金、登録等に伴う費用などが含まれている旨を書く
  • 登録の時期や地域など一定の条件をつけた価格である旨を書く(例:「XX月現在、県内登録、店頭納車の場合の価格です」)
  • お客様の要望によるオプション等の費用は含まれていない旨を書く
  • 支払総額に千円未満の端数がある場合は切り上げて表示する

ローンの支払例やリース料金を載せる場合

割賦販売の支払例を載せるときは、支払総額に対する支払例を出すか、諸費用は登録時までに支払う旨を明示したうえで車両価格に対する支払例を出すか、どちらかの形にします。支払総額を出さずに月々の支払額だけを載せるのは認められていません。一方、個人リースは売買契約と異なるため支払総額の表示は義務づけられておらず、リース料金だけの表示も認められています。公取協はできるだけ支払総額を併記するよう勧めています。福祉車両など非課税の車は、「消費税込み」と書く場合に、車両が非課税であることを明瞭に表示します。

支払総額表示で必ず書く文言

中古車の支払総額表示では、金額の横に書き添える文言が決まっています。公取協の改正規約の説明では、「支払総額」の名称で価格を示し、内訳として車両価格と諸費用の額を表示し、価格に保険料、税金、登録等に伴う費用が含まれている旨と、登録等の時期や地域について一定の条件をつけた価格である旨を表示することとされています。公取協のチェックポイント資料の記載例では、これに加えてお客様の要望にもとづくオプション等の費用は含まれていない旨や、リサイクル料金が預託済みである旨も示されています。車両価格を支払総額より大きく目立たせる表示は認められず、重大な違反になります。店頭の札の書き方は中古車プライスボードの作り方と表示項目でまとめています。

支払総額表示の違反例と規約違反の措置

公取協は、表示した価格と違う価格で売ることを「不当な価格表示」としています。公表されているQ&Aや説明から、違反になる典型例を拾うと次のとおりです。

  1. 表示した支払総額のほかに、保証料や整備費用を別に請求する
  2. 本来は車両価格に入るべき納車準備費用などを、諸費用として別に請求する
  3. 諸費用を含まない金額を支払総額として表示し、あとから諸費用を請求する
  4. 原価に近い車両価格を表示して、利益や販売手数料、広告掲載料を別名目で請求する
  5. 「定期点検整備なし」と表示しながら、整備費用の支払いを販売の条件にする
  6. 車両価格を支払総額より大きく目立つように表示する

車検切れの車に「検2年付」と書く表示にも注意が要ります。公取協のQ&Aでは、定期点検整備付きで売る場合に限って「検2年付」と書けるとし、その場合も車検の有効期限が切れている旨を表示するよう求めています。「定期点検整備なし」で売る車や、別途整備費用がかかる車に「検2年付」と書くのは認められていません。

規約違反になった場合の措置

中古車の支払総額表示に違反した場合の措置は、2023年10月1日の規約改正で重くなりました。公取協の説明では、「不当な価格表示」に関する違反措置の基準が見直され、走行距離や修復歴の不当表示と同じく、初回から「厳重警告」の対象になります。悪質な場合は、あわせて違約金を課したり、事業者名を公表したりする措置もとられます。苦情や相談の件数が多い事業者には、実態調査や監視活動も行われます。違反の多くは、表示した支払総額と、実際に見積書や注文書で請求する金額が一致しないところから起きます。表示を作る人と見積書を作る人が別でも、同じ内訳を使う仕組みにしておくと防ぎやすくなります。

見積書・注文書での支払総額の扱い

公取協のQ&Aでは、広告、店頭展示車、注文書などすべての販売価格を支払総額(内訳は車両価格と諸費用)に切り替える必要があるとしています。店頭の札だけ直して、見積書や注文書の書式が以前のままだと、車両価格の欄の下に独自の費目が並び、表示と請求がずれる原因になります。

見積書は諸費用の内訳を項目ごとに書ける書式にし、注文書は見積書と同じ並びで金額を写せる書式にしておくと、確認が楽になります。日本カーネットの車両販売用の注文書・見積書は、JUモデル注文書(特約事項)準拠確認済の書式で、Yahoo!ショッピングの日本カーネット店で100枚セットから購入できます。見積書の諸費用の書き方は中古車見積書の作り方と諸費用の内訳も参考にしてください。

表示と帳票の数字をそろえる方法

支払総額の表示と、見積書・注文書の金額をそろえるには、車両価格と諸費用の内訳を1か所で管理するのが確実です。手書きの場合は、プライスボードに書いた内訳を見積書の同じ欄へそのまま写す順番を店で決めておきます。システムを使う場合は、車両情報から見積書と注文書を作れるものを選ぶと転記の回数が減ります。日本カーネットが帳票購入者に無料で進呈している車両販売システムの機能制限版には、見積・契約書作成とプライスボード作成があり、リサイクル料金や重量税の取得にも対応しています。利用期限はライセンスキー発行日から3年間です。どんな機能があるかは機能制限版でできることでご確認いただけます。

よくある質問

支払総額のルールは自動車公正取引協議会の会員店だけが対象ですか?
公取協のQ&Aや説明は、自動車公正競争規約にもとづいて中古車を表示・販売する事業者向けに書かれています。自店が規約の対象になるかどうかの判断は、公取協に直接確認するのが確実です。対象かどうかにかかわらず、お客様の比べやすさを考えると、同じ書き方にそろえておくと商談がスムーズになります。
「コミコミ価格」と書けば「支払総額」と書かなくてもよいですか?
公取協のQ&Aでは「支払総額」の名称は必須とされています。「コミコミ価格」などの言い方は、「支払総額」と並べて書く形なら使えます。
車庫証明の代行をしていない店でも、車庫証明手続代行費用を入れるのですか?
公取協のQ&Aでは、代行することを前提とした支払総額を表示するとされています。車庫証明が不要な地域の店でも同じです。商談でお客様が不要と分かった場合は、差し引いた額を示します。
下取車の名義変更の代行費用は諸費用に入れられますか?
下取車諸手続代行費用は、下取車がある場合にだけ発生し、お客様によって要否が違うため、支払総額には含められないとされています。下取りがある商談では、見積書で別の項目として示します。
車販ソフトや自動車整備システムを選ぶとき、支払総額の面では何を見ればよいですか?
車両価格と諸費用の内訳を入力でき、その内訳がプライスボードと見積書・注文書の両方に反映されるかを確かめると安心です。整備や車検も自社で受けているなら、整備と車両販売を1つで扱える自動車整備システムも比べる対象になります。日本カーネットでは、帳票購入の特典として車両販売システムの機能制限版を進呈しているほか、整備と車両販売をまとめて扱える整備システム・整備ソフト DREAM POWERもご案内しています。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。税務・法令の個別の判断は、税理士・行政書士または所管官庁にご確認ください。

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